『卒論合同』のチェックを終えて

これは2022年中に7割くらい書いていたのだけどなんか忙しくて書き終われず放置していたらいつのまにか1年経っていた、卒論合同をチェッカー視点で振り返る記事です。発行1周年おめでとうございました🎉

卒論合同とは

スタァの非公式同人誌です。特設サイトをご覧ください。

saboteng23.wixsite.com

2023年12月現在、メロンブックスにて頒布中。

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1652581
メロブのリンクは埋め込み表示にならないな…

また、寄稿論文やイラスト(公開OKのもののみ)はnoteにて順次公開されています。

note.com

以下、合同誌に倣って常体で書いております。

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はじめに

本稿は、『舞台創造科3年B組 卒業論文集』(以降、卒論合同)の第三者チェック*1の担当者がチェック作業をなんとなく振り返り、好き勝手に所感を述べるものである。
性質上、卒論合同の制作過程や寄稿論文の内容等にほんの僅かながら触れている。読者諸氏におかれては、このような第三者による謎の記事を読む前に、卒論合同自体を読み進めていただきたい。所持しているが未読という方は、主催による序文、および副主催による編集後記だけでも先に一読することを推奨する。

なお本稿では、本稿の書き手(カラウチ)を「筆者」、卒論合同へ論文を寄稿した参加者を「論文執筆者」と呼称する。

本稿の構成を以下に示す。

  • はじめに
  • 参加経緯
  • チェック範囲と期間
  • チェック手順と観点
  • おまけ
  • 終わりに

■参加経緯

参加経緯は単純で、主催チームから「チェックしてくれませんか〜!」と言われたので「オッケー!」と答えたのみである。

卒論合同なる企画が立ち上がり寄稿者を募集していることや、知り合いのオタクが何名か筆を執る予定となったことは知っていたが、筆者自身には論文を書きたい希望はなかったため、頒布されたら買おうかな、という距離感だった。そんなところにチェック作業の打診をいただき、あれよあれよと関係者となったわけだ。

最終チェックに第三者を立てることになった詳しい経緯は存じ上げないが、打診時は「長文を読むことに慣れている人」「寄稿者ではない人」のような条件が挙げられていた記憶がある。
チェッカー候補として挙げていただいたこと自体が光栄であるし、元来面白そうな企画には参加したがりなので、一部でも協力できるとなれば願ったりなのだった。

特製付箋とネームカード

■チェック範囲と期間

チェック対象の論文は99本*2、チェック期間は2022年5月18日~9月20日。作業休止期間もあったとはいえ、合同誌制作のラストスパートを併走した恰好だろうか。

記録がてら、チェックのペースを記載しておこう。

~5月:6本
~7月:4本
~8月:11本
~9月:78本(驚愕)

チェック中に使用していた進捗管理表(自分用)

盛り上がっていた時の日次報告(?)

■チェック手順と観点

卒論合同の原稿に対し、筆者が行った目視チェック*3の手順や観点を以下に記す。

チェック対象はAdobe InDesignから生成されたA4判型のPDF。PDFの閲覧や校正結果の記入に使用したソフトはAdobe Acrobat Pro(以降、Acrobat)である。

大まかなチェック手順は以下のとおり。

①テンプレート適用の確認
②連番の確認
素読
④独断ピックアップチェック
⑤註番号と脚註の確認

なお、手順内容は筆者が自主的に検討したものである。*4

①テンプレート適用の確認

本文内容の確認に入る前に、まずは全体的な部分のチェックを行う。

卒論合同では、論文を流し込むInDesignテンプレートが用意されていた。これが正しく適用されているかを確認する。

筆者が原稿を受け取るよりも前の工程、すなわちチェック班や主催チームによる原稿チェックの時点では、論文内容そのものの確認が実施されており、InDesignで組み終わったPDFに対するチェックはまだそれほど行われていないようだった。それならば外観についてもある程度見ておいたほうがよいだろうと判断して設けた観点である。

ページ全体が見える程度の拡大率でPDFを表示し、見出しスタイル、本文スタイルが適切にあたっているか、タイトル直後に付すキーワードの配置が適切かなどを目視する。

②連番の確認

同様に、見出しの番号や本文中の連番などが通っているかを確認する。図表番号が付されている場合は併せて確認する。

手作業で番号を付している場合、ヌケや重複が起きることがままある。

素読

文字が読みやすい程度の拡大率*5でPDFを表示し、タイトルやキーワード、図表、脚註を含むすべての文字を読む。必ずしも音読しないが、声に出す速度で、小単位に区切って追っていく。誤字・脱字・衍字やスペルミスの多くはここで発見される。

この工程で気にかけるべき点は多い。主述のねじれがないか。図表番号や見出し番号が本文中で示されている場合に、対応する図表と番号が合っているか。ピックアップ(後述④)した方がよいキーワードがないか。筆者の内省に照らし、事実と異なる情報がないか。不要なスペースや改行などが混入していないか。

また、卒論合同の論文ページでは、タイトル、キーワード、見出し、図表のキャプション、本文の和文、欧文、数字にそれぞれ異なるフォントが使用されている*6。正しいフォントが適用されているかについても、目視でわかる範囲で確認した。

番外 時間を置く

バイスを変えることで目とチェック対象との距離やディスプレイの明度など条件が変わる。
当初はPCで1周以上、翌日iPadで1周通読する、というように重ねて確認を行っていたが、途中からそんなことをしている時間がなくなったため、PCでの確認に絞った。

④独断ピックアップチェック

変換ミスの起きやすい語句、表記揺れの起きやすい語や記号、文字数の多い名詞、複雑な綴りの欧文語句などを本文中からピックアップし、検索機能を用いて確認する。デジタルのちからにより、③で見逃したミスが浮かび上がることがある。

たとえば、③のチェック中、多数の西條さんの中に西条さんが1人でも見つかった場合は、他にも西条さんがいる可能性がある。「西」や「西条」などを検索し、見つけ次第お帰りいただく。*7

今回はAcrobat搭載の検索機能を主に使用した。チェック対象によっては、テキストを抽出し、テキストエディタ*8での検索確認も実施した。

⑤註番号と脚註の確認

本文中の註番号と脚註の対応を確認する。脚註は文字サイズが小さいこともあり、目が滑ったり、無意識に軽視されたりするものだ。DTP編集作業の観点から言っても、番号のズレやヌケなどが発生しやすい細かな作業だ。故に、なるべく気を抜かずにチェックしたい。
脚註をすべてじっくり読むのは熱心な読者かチェック担当者くらいである。*9

言い訳がましい余談

恐れながら、今回のチェック作業は、筆者の体感覚に即し精度85%程度の対応とした。時間が許せば100%に限りなく近づけるべきだが、本作業には厳然たる期限があったためである。トマトの日*10の発行を目指し、各担当者が寝食を惜しんで動いているさまは、さながら幕開きの迫る小屋入り中であった。幕が上がるまでに可能なレベルの最良を目指すのが舞台創造科のリアルであろう。
論文ページにえげつない誤記などが残っていた場合には、三方を差し出されずとも、筆者が率先して腹を切る所存である(誰?)。

おまけ 指摘した箇所の例

チェックにて指摘した箇所のうち、特に好きだった箇所をいくつか挙げよう。
論文執筆者には敬意を。論う意図は一切ないことをことわっておく。

  • ジションゼロ(ボ……!)
  • Feburi(ぶり度つよめ)
  • シェイスクピア(あるある。これは主催が序文で挙げてくださっていた)
  • 聖翔音楽学校(宝ほにゃほにゃ)
  • 聖翔音楽学院(シークほにゃほにゃ)

他、ここに挙げるほどでもない細かいことをさまざま指摘させていただいた。

タ◯ンページ

終わりに

さて、感想文ともレポートともつかぬ乱れた文章を記してきたが、概ね自分用の思い出記録でしかないので、あえて読者に伝えたい点は数少ない。

1つ、卒論合同は120人以上の情熱が込められたかなりやばい書物で、そのオタク的価値は計り知れないという点。

2つ、作品タイトルの「少女☆歌劇」と「レヴュースタァライト」の間には半角スペースが必要である、という点である。すなわち「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」が正となる。*11

ここまでのお付き合いに感謝を申し上げる。
チェッカーの役を得て、この途方もない企画の歯車となれたことを幸いに思う。

 

2023年11月 🍅
カラウチ

 

この記事に誤字などがあったらこっそり直します✌

 

追記:

なんか論文調にしようと頑張ってたら素直な感想書くの忘れてましたね。いっぱいチェックできて楽しかったです!!!!!!! 我こそは文章校正大好きマン!!! ただし自分の文章はめんどくさがってあんまりチェックしません!!

自分は99論文を全部読んだ初の(?)第三者だったらしいのだけど、チェックにリソースを持っていかれて感想を書けなかったことを反省しています。一言感想レベルでいいからチェックと並行して残しておけばよかったな…と。それくらいの時間はひねり出せたのではないかと。今から感想を書くのはたぶんやれないと思うので(ごめん…)。
論文執筆者の方々には、私は皆さまの論文を一字一句確かに読みました、とだけお伝えさせてください。

*1:クレジットでは「最終チェック」と表記されている。

*2:ページ数は計373ページと記録していたが、作業上の目安に過ぎないため、不正確かもしれない。

*3:人の目でチェックすること。対して機械的な校正を実施できるツールも多数あり、今回のチェックにおいても補助的に使用した。とはいえ筆者の周囲では、依然「人の目でじっくり読む」ことが肝要とされている。また、本稿において機械校正の話をしても特段面白味はないので割愛することとした。(ふーん。じゃあ目視校正の話は面白いんか? と問われると黙るほかない。)

*4:主催チームからは「誤脱チェックをしてくれ」と依頼されていただけで、詳細な観点の指定があるわけではなかったので、筆者が確認しておきたいと思う点を勝手に確認した形だ。

*5:おそらく、普通にPDFで論文を読むときよりもずっと拡大している。文章が読みやすい程度ではなく、文字が読みやすい程度である。

*6:なお、頻出ワード「wi(l)d-screen baroque」にも専用のフォントが指定されていた。

*7:誤字は多様だ。さいじょすあんや斎場さんなども現れることがある。固有名詞にはいくら留意しても足りることがない。

*8:Visual Studio Codeを使用。本稿では詳述しないが、正規表現を用いた検索も校正において有用である。

*9:論文執筆者の脚註に対する熱量はさまざまだろう。本文の延長として長文を並べる人もいれば、シンプルに出典や補助情報を足すだけの人もいる。筆者は一般の書籍を読む際にもなるべく註を読もうと心がけてはいるのだが、本文との行き来を面倒に感じて飛ばしてしまうこともあるのが実情だ。

*10:2022年10月10日。

*11:「★」でも「レビュー」でも「スター」でもまったくご愛嬌なのだが、作品を論じることに誠実たろうとするならば、ぜひとも正式な表記を使おう!