『Not So Bad』の話② 表紙【Advnt21】
出した本について書く記事です。
『Not So Bad』2020.12
今回は表紙づくりの話をしていきます。
前回の記事(チケット印刷について):
印刷所
『Not So Bad』は「二色刷りがやりた~~~~い」のモチベに基づいてつくられた本です。
最初から、印刷をレトロ印刷JAMさんにお願いする想定で作り始めました。たのしい印刷に関心のあるひと(?)の多くがご存知であろう、リソグラフやシルクスクリーンの印刷で有名な会社さんです。
公式サイトの情報量がすごいのでぜひご覧になって深淵をのぞいてほしい。
JAMさんは同人印刷所ではないのですが、同人系の実績もたくさんあるので、安心して幻覚を入稿できます。
個人的には数年前に同人用の名刺を作ってもらったことがありました。これ↓
(※きたねえ字はペンで直書きしたもの)
いらなさが爆発しているサイン入り名刺、ほしいひとあげます。お知り合いにはたぶん押し付けます。 pic.twitter.com/iaoaCHrp2x
— S. Karauch🤹♂️ (@egmfyw) 2017年3月9日
この名刺は一色刷りでしたが、二色刷りいつかやりたいなぁ~という気持ちとともに数年過ごし、今回やっと初回チャレンジができました。
データをつくる
この本の印刷方式は孔版印刷というやつで、同人印刷のメニューで一般に「オフセット」とか「オンデマンド」とか呼んでいるものたちとは印刷のしかたが異なります。くわしくはぐぐってね。
一般的なカラー印刷では、フルカラーの原稿データを1枚つくってそれを入稿します。
孔版印刷では、たとえば赤・青の二色刷りを行う場合、赤色版のデータ、青色版のデータをそれぞれつくって入稿します。伝わるかな…!? かんたんにいうと版画をつくるのと一緒ですね。
実際に入稿した表紙データを載せます。
表紙は「水色」「朱色」の二色で刷りました。
用意されているテンプレートをPhotoshopで開き、水色で刷りたいところを黒(K)一色で作成。
朱色で刷りたいところを同様に作成。
上記の2枚が入稿データで、これを一枚の紙に刷り重ねたときのカラーイメージを別途作成したものが以下です。
二色刷り原稿のつくりかたは、データを完成イメージの色で作成して後から版ごとに分割する方法と、最初から版ごとに作成する方法があるみたいです。
あとから版を分割するのむずそう!!!!と思ったため、私の場合は最初から版ごとにレイヤー(最終的にはファイルも)をわけて、グレースケールで作成しました。
色の濃淡はインクのパーセンテージで指定しているのですが、濃度の値はほぼ勘でやりました。ワハハ。事前に刷り見本は熟読していたのですが、表紙はちょっとインク量多かったな~という反省があります。次に活かそう!
JAMさんの紙見本兼インク見本「あそびかたろぐ」、ちょうたのしいのでおすすめ。
カラーイメージの作成
JAMさんへの入稿時、入稿データ(グレスケで作成した各版のデータ)とは別に、仕上がり見本を同梱することが推奨されています。
上述しましたが、私の場合は最初からグレスケでデータを作ったので、色のついた仕上がり見本を別途作成する必要がありました。グレスケのデータにあとから色をつけるの、どうやるんや……😨となりました。
当時は色々(時間などが)限界だったので、グレスケのデータに色をつける方法がわからず死にかけていました。
- 塗りつぶし、クリッピングマスクなどで色をつける→濃淡が再現されない
- 色調補正系で色を変える→元が黒色だと色が変わらない
…などのことでつまずきました。
Photoshop、黒い部分の色を変えるのむずいんですよね。このときは結局ドキュメントモードの「ダブルトーン」を使いました。
- からっぽのフルカラードキュメントをつくる
- 朱色版のグレスケドキュメントをダブルトーンモードにして朱色をつける
- 水色版のグレスケドキュメントをダブルトーンモードにして水色をつける
- 手順1のドキュメントに手順2、3のレイヤーをコピペする
- 仕上がり見本完成
朱色版をつくるときはこんなかんじ↓
グレスケの原稿で、[イメージ]>[モード]>[ダブルトーン]を選択。
インクの数と色を指定。ここでは朱色版の原稿全体に対して朱色をあてています。
濃淡そのままでインク色が黒→朱に変わりました。
(後から調べましたが、どうやらPhotoshopでは「べた塗りレイヤー」機能で見た目の色を変えられるみたいです。次があれば使ってみよう)
仕上がり
表紙にはツヤプリ加工なるものを実施しています。インクに樹脂をのっけて熱でかためるので、印刷部分がツヤっとしてちょっとふくらみます。実物をお持ちの方はさわってみてね。
用紙は「富士わら紙」です。藁の繊維がめっちゃ入っており、繊維の入り方で表情が違います。ひとつとして同じ表情はなく、手作り感があってかわいい。
当然ながらキャラクターのおかおのところなどにも普通に繊維が入るので、ごみだと思われてしまうかも……というのはありました。が、仕様です!(主張)
そのた・表紙の絵自体のこと
絵自体を描くのにもやたらと時間がかかったことを思い返しています。そもそもお絵を描き慣れていないというのに、どのように二色に分版するかを足りない頭で考えながら描いていました。こちとら常にあたまパニックやぞ。
案段階のざっくりラフが1こだけ残っていた。もじのならべかたは結構悩みました。
表紙絵を描いているツリーは以下。
治安と視線いじった pic.twitter.com/5pEantiA24
— S. Karauch🤹♂️ (@egmfyw) 2020年10月3日
レトロ印刷にはインクの色が混ざる特徴があります。混色というおもろシステム(沼)なのですが、逆に言うと色を混ぜたくない場合は絶対にインクを重ねてはなりません。
今回の表紙は混色をするつもりがなかったので、色が重なる部分がないように神経をすり減ら…気を使いました。お暇な方は水色版と朱色版を見比べてみてね。たとえば朱色版での題字部分白抜きとかめっちゃがんばりました。白抜きをがんばるis何。
以上、表紙の話でした。
ここよくわからんからもっと説明して!とかあったら箱に投げてね。
次回は本文について書く予定です。→書きました。
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